ストックオプションにはいくつかの種類がありますが、導入を検討するにあたって、初期段階で決めることになるのが、「無償型か有償型か」という選択です。なぜなら、いずれを選ぶかによって、課せられる税率や条件設定などの面で、大きく異なってくるからです。
ここでは、無償ストックオプションと有償ストックオプションの違いやメリット・デメリット、価格や条件設定の留意点について解説します。
約200社の上場会社クライアントとの経験とノウハウを活かし、顧客ニーズを汲み取った迅速かつきめ細やかな新株予約権評価・算定サービスを提供するプロフェッショナル集団。不動産を含む、資産評価についての国際評価基準を策定する国際評価基準審議会(IVSC)のメンバーであり、事業計画の理解、検討・分析のうえ、適正な株価算定などを行うことが可能です。
グループ会社である東京フィナンシャル会計事務所とともに、会計、税務からコーポレートファイナンスまでを包括した、トータルソリューションサービスを実現できる点も大きな特徴になっています。
無償ストックオプションとは、その名の通り、役員や従業員に無償で付与されるストックオプションのことです。一方で、有償ストックオプションは、付与される者が有償で購入するストックオプションになります。具体的には、付与される者は、公正価格で新株予約権を購入し、権利行使価額と権利行使時点の株価との差額で利益が得られる仕組み。それぞれのメリット・デメリットを、詳しく解説します。
無償で付与されるため、従業員から取締役まで、誰にでも付与しやすい点が大きなメリットです。一方、無償付与なので税制上は給与や報酬とみなされ、税制適格要件*を満たさない場合、ストックオプションの行使次点で給与課税(最大約55%)が発生することになります。実際、ストックオプションは、IPO(新規公開株)前後に権利行使されることが多いので、巨額の含み益を抱えてしまう場合もあります。
また無償ストックオプションは、株主総会で付与理由を説明し、株主の理解を得なければ発行できないなど、法律、会計、税務の制度上におけるさまざまな留意点が存在するため、結局は導入できなかったというケースも多くあるので留意が必要です。
税制適格の代表的な要件として、以下などがあります。
このうち1つでも満たせない場合、「税制非適格」となり、最大55%の累進課税が課せられることになります。
無償で付与されるストックオプションと違って、金融商品(株式の売買のようなもの)と見なされるため、株式譲渡時に、譲渡所得税として20%前後のみ課される(先行課税されない)点が、大きな特徴のひとつになります。また、あくまで任意の投資制度であり、報酬ではないため、取締役会のみで機動的に発行できる点もメリットだと言えるでしょう。
一方、有償で付与されることについては、メリット・デメリットの両面が考えられます。メリットとしては、有償である以上、役員・従業員が購入するにあたって、明確なコミットメントを引き出せる点。デメリットとしては、対象者の経済力によっては、負担が大きくなる場合が挙げられるでしょう。
ストックオプションは、将来の企業価値向上に応じて、役員や社員に経済的利益を分配できるという、特に非上場企業にとって魅力的なインセンティブプランだと言えます。ただし、無償ストックオプションと有償ストックオプションでは、「給与と見なされるか」株式売買と見なされるか」によって課税の種類および税率がまったく異なること、また法律上の留意点によって、発行における制約が異なることなどを留意して選択する必要があります。
有償ストックオプションを検討する際には、事後的にもストックオプション価額の算定根拠を説明できることが重要です。特に、近年は取引所、監査法人への説明責任が注目されており、その評価の妥当性が疑わしい場合、法律上、税務上、会計上様々なリスクが発生してしまう可能性があります。
一方で、発行価額の算定は、設定する条件によって複雑な数理計算が絡むため、自社にあったストックオプションの制度設計および評価を任せられる、実績豊富な機関に相談することが重要になると言えるでしょう。