自社株をあらかじめ決めた価格で取得可能な権利を付与するストックオプション。社員向けに制度を活用するなら、適切に設計することが求められます。このページでは、ストックオプションを設計する際に必要なポイントを紹介します。
ストックオプションを設計する際、特に注意しておきたいのが発行限度枠です。発行限度枠とは、発行済株式総数に対するストックオプションの割合のこと。一般的には、発行済株式総数の1割程度を上限に割り当てるのがよいとされています。
仮に発行済株式総数が100万株だった場合、発行限度枠は10万株程度が適切です。なお、発行限度枠が発行済株式総数の1割を超えた場合、IPOなどの審査に影響を及ぼすおそれがあります。極端に割合を増やさないように注意しましょう。
べスティングとは、ストックオプションの権利が行使可能になるまでの期間のことです。ストックオプションを設計する際、べスティングを設けるケースは多々見られます。
べスティングを設定しなかった場合、ストックオプションの付与や上場と同時に社員が退職してしまうおそれがあります。優秀な人材が流出するリスクが高まり、自社の経営に影響を及ぼす可能性も否定できません。ストックオプションを設定するなら、必ずべスティングを設けておきましょう。
ストックオプションは、税制適格と非税制適格の2種類があります。初めて設定する場合、税制適格ストックオプションとして設計を行いましょう。
税制適格ストックオプションは、権利行使時に譲渡所得として扱われます。譲渡所得は課税率が低いため、税負担を軽減できるのが特徴です。一方の非税制適格ストックオプションは、権利行使時に一部が給与所得扱いとなり、高い税率を課せられてしまいます。節税のためにも、税制適格ストックオプションになるよう設計を進めましょう。
ストックオプションを税制適格ストックオプションとして設計する場合、通常のストックオプションとは異なる注意点があります。注意点を守れなければ、非税制適格ストックオプションとなってしまい、節税のメリットが薄まります。
ストックオプションの権利行使価格はストックオプション発行時点での企業の株価をベースに設定されるので株価が安い時にストックオプションを発行した方がキャピタルゲインが増加する可能性を高めます。株価が上がってからよりも、上がる前のタイミングでのストックオプション発行がポイントです。
特に外部からの増資による資金調達では株価が高まる傾向にあります。場合によっては何倍にも高まることから増資を予定している場合には増資前にストックオプションを発行することで、権利行使価格の上昇抑制効果も期待できます。株価が高くなってからのストックオプション発行よりも、ストックオプションのメリットを享受しやすいので発行時の株価は要チェックです。
ストックオプションは有用なシステムではありますが、決して無制限に行えるものではありません。一般的に、発行済株式の10~15%程度が上限とされていますので、ストックオプションを発行する場合、IPOイメージから逆算し、タイミングや量を検討しましょう※1。
何度も発行できると考えてストックオプションを計画していると、発行できずに終わってしまうこともあります。
ストックオプションを一度に大量に発行すると、その後の選択肢を狭めることになりかねません。新株予約権の総数や権利行使価額は株主総会で定め、その後1年間発行できますが、その都度税制適格要件を充足しているのかを判定するので、複数回で分けるよりは1回で発行した方が良いでしょう。
参照元:IPO Compass 第4回「資本政策② ストックオプション編」
ストックオプション行使時、給与所得課税となるとストックオプションで得られる経済的メリットが軽減されてしまいます。有償型ストックオプション、税制適格ストックオプション(無償型)、信託型ストックオプションの3種類は給与所得課税が行われないストックオプションとなりますので、この3種類の中からストックオプションの種類を選択しましょう。
これら以外のストックオプションを設定すると、ストックオプションを受け取る際のメリットが軽減されてしまうと覚えておきましょう。
ストックオプションは自らで設定する行使要件を満たすことで発生するものです。その際、あまりにも簡単に達成できる要件ではストックオプションのメリットが短期間で終わってしまいます。一方、あまりにも行使要件の難易度と高く設定してしまうと「実現できない」との思いを強めてしまい、やはりメリットを薄めてしまいます。簡単にできるものではなく、かといって難しすぎない行使要件が理想です。また、フリーハンドでの行使は認めない方が良いでしょう。在職要件や行使期間要件といった制限を設けることで会社にとって不利益にならないストックオプションとなりますので、必ず留意しておきましょう。
ストックオプションを導入することで、優秀な人材を採用できる可能性が高まります。
どのような企業においても、事業成長のためには優秀な人材の確保は欠かせません。将来のリターンが期待できるストックオプションを導入すれば、大きなアピール材料になります。その分自社の魅力を高められますので、ストックオプションを導入していない同業他社との差別化にもつながるでしょう。
一方、ストックオプションは自社の人材をつなぎ止める役割も果たします。例えば、勤務年数が長くなるほど付与するストックオプションの数を増やしたり、権利行使要件を緩和したりすれば、従業員は自然と長期間働くようになります。人材流出を防止できるのはもちろん、従業員のモチベーション向上・維持にも寄与するでしょう。
ただし、厳しすぎる要件は逆効果となるため注意が必要です。
ストックオプションは、従業員の当事者意識を高めることにもつながります。株主と同じように、従業員が会社の一部を所有することになります。そのため、自社の成長がストックオプションの権利行使価格という形で返ってくるのです。
また、会社に愛着が湧く従業員も出てくるでしょう。一方、当事者意識が高まることで、会社の危機感も共有しやすくなります。
ストックオプションを導入する際は、いくつか注意しておきたい点があります。目的の明確化や、アドバイザーの任命などを行いましょう。
ストックオプションを導入する際は、目的を明確にすることが重要です。目的が曖昧なまま導入した場合、会社・従業員いずれも恩恵を受けられない可能性があります。
一方、人材を確保したい、従業員の待遇をよくしたいなど、導入の理由や目的が明確になっていれば、スムーズにストックオプションを設計できるでしょう。
いずれにせよ、誰に対して・何のために導入するのか、しっかり決めることをおすすめします。
ストックオプション導入にあたって、アドバイザーも決めておきましょう。ストックオプションは経営に大きな影響を及ぼすため、慎重な設計・導入が求められます。また、適切に制度を運用するためにも、アドバイザーを配置し、幅広い分野に対応してもらう必要があります。
なお、アドバイザーは専門性が求められるため、社内の人材ではなく外部のプロに任せましょう。コンサルティング会社や、ストックオプションの設計・評価に対応した外部業者への委託が望ましいといえます。
ストックオプションは有用なものではありますが、設計時に気を付けるべきポイントを軽視すると、ストックオプションで得られるメリットを半減させてしまうことになりかねません。設計の段階で決めておかなければならないことが多々ありますので、初めからストックオプションに詳しい業者に相談した方が良いでしょう。当サイトではストックオプションをサポートしてくれる業者を多々掲載していますので、気になる業者・自社にマッチする業者がないか、探してみてはいかがでしょうか。
上場企業、金融機関・官公庁、スタートアップ企業のそれぞれが直面するストックオプションに関する課題は異なり、最適なパートナー選びがその成功を左右します。資金調達の柔軟性、企業価値評価の公正性、インセンティブ設計などの課題に対応するためには、専門的な知識と経験が求められます。
ストックオプションの評価と設計において特有の強みを持ち、これらの課題に応えるソリューションを提供しているストックオプション評価機関を紹介します。