ここでは、株価算定の基礎知識やストックオプションの関わりについてまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
株価算定とは、株主が所有する株式の価値を計算する手法を指します。第三者に対して株式の価値を示す際に用いられるケースが多いです。具体的には、M&Aにて株式譲渡を行う際や第三者割当による資金調達時、損害賠償額の算出時、相続など、さまざまな場面で必要となるでしょう。
株式市場で株価を評価できる上場企業で株価算定を行うケースがほとんどない一方で、非上場企業は株価を評価する基準がないため、株価算定をはじめとしたさまざまな方法で企業や株式の価値を明確にする必要があります。
株価算定と似ている用語に「企業価値」がありますが、企業価値は企業の所有する事業や保有資産の総合的な価値を示すのがポイントです。株価算定で明らかになる株式価値とは異なるため、注意しましょう。
純資産価額方式は、帳簿に記された純資産をベースとした株価算定方法で、コストアプローチにおける株価算定方法として利用されることが多いです。企業が解散した際の価値を前提に、株主がどれくらい財産を受け取れるのかを算出します。ここでいう「純資産価額」とは、企業の現時点での資産から負債を差し引いた額です。
純資産価額方式には、貸借対照表を使用して簡単に算出できるというメリットがある反面、市場での評価が加味されないなどのデメリットも存在します。
収益方式とは、企業の利益やフリーキャッシュフローをベースとした株価算定方法を指します。純資産価額方式がコストアプローチにおける株価算定に有効であるのに対し、収益方式はインカムアプローチにおける株価算定に有効です。
収益方式の方法には、収益還元法とDCF法の2種類が存在します。収益還元法は、企業が過去3~5年に得た利益のアベレージを基準に、その後も一定の利益が継続すると仮定して株価を計算する方法です。 DCF法は、将来的な企業の成長を見越した株価算出方法で、実績以外にも事業計画などからも株価を求められます。
株主が手にした配当額などを基準に株価を算定する配当還元方式は、インカムアプローチでの株価算定方法として有効です。同族企業における少数株主が株式の相続や贈与を行う際に利用されます。これまでの配当や内部留保を参考に計算するので客観的な株価算定ができる反面、市場動向との間に矛盾が生じやすく、理論的ではないとも言われているでしょう。
なお、配当還元方式には、過去数年の配当実績などを利用する「配当還元法」と、過去の配当実績に加えて内部留保も加味する「ゴードン・モデル」の2種類が存在します。
類似業種比準方式とは、類似業種の株価、純資産、配当などをベースに株価を算出する方法です。上場企業のデータを参考にするので、現実性の高い株価の算出が期待できます。ただし、類似業種に上場企業が存在しない場合は、合理性に欠けた株価算定になりやすいです。
ベンチャー企業の場合は優先株式による資金調達が一般的ですが、ストックオプションの対象となるのは普通株式です。株価算定では、優先株式の権利内容をもとに普通株式の価値を決定します。つまり、優先株によって他の株よりも高い額で資金調達できる反面、それよりも低い普通株式の株価をベースにストックオプションの行使価格を決められる場合があるということです。
なお、ベンチャー企業において「みなし清算条項」を設けている場合は、優先株式と普通株式の間に価格差が生まれます。
ストックオプションの会計処理は、会計基準等を遵守して行われます。会計基準等に則って会計処理を行った倍、ストックオプションの発行時に公正価格を人件費として計上するのが一般的です。
その際、未上場企業はストックオプションの公正価値に着目しなければなりません。なぜなら、未上場企業の場合は、上場企業のように公正価格の評価方法にはっきりとした決まりがないからです。
具体的に、未上場企業がストックオプションの公正価値を算出するには、損益計算に反映するのに十分な信頼性や信憑性をもって見積もるのが難しく、特例によってストックオプションの本源的価値を費用計上します。
本源的価値とは、ストックオプションの権利行使を仮定した際の価値であり、企業における現在の株価と行使価格の差額のことです。株価と比較して行使価格を低くした場合、差額分の費用計上が必要となります。なお、差額がマイナスとなる場合は、本源的価値はゼロと判断されます。
2023年7月から切り替わったストックオプション課税制度では、信託型ストックオプションへの課税について株式の売却以外にも取得段階で課税が発生するようになりました。株式の取得や交付によって報酬が発生したと判断され、給与や賞与などと同じように累進税率が適用されるのです。なお、信託型ストックオプションにおける年間行使量が多ければ、そのぶん税率も上がります。
また、信託型ストックオプションは給与所得課税に分類されますが、社会保険の対象ではないのもポイントでしょう。給与所得課税に分類される理由は、信託型ストックオプションが「行使価格と発行価格のトータル」と「行使された時点の株価」の差額を給与と認識するからです。そのため、所得税や住民税の対象ではあるものの、社会保険の対象にはなりません。
ストックオプションにおける行使価格が純資産額などを上回る場合は、時価評価額を下回っていても問題ありません。資金調達時の企業価値評価のようにいくら時価評価額が高くても、行使価額が純資産額等以上であれば要件を満たしたと判断されます。
2023年7月からは「セーフハーバールール」が新設され、株価算定ルールが明確化されたのもポイントです。セーフハーバールールとは、財産評価基本通達をベースとした算定方法による株価を行使価格の下限として認めるための決まりです。一定の要件さえクリアしていれば、違反や罰金の対象とならない範囲を定めており、税制適格の否認リスクを回避するのに役立ちます。
とはいえ、純資産額などをもとにした株価の行使価格は、あくまでも特例措置であることを忘れてはいけません。そのため、ストックオプションを発行した時点の時価評価額を下回る範囲と行使価額の差額は、経費計上が必要です。
ストックオプションの発行は販管費に計上されるので、上場時の評価額に悪影響を及ぼす可能性があります。
上場企業、金融機関・官公庁、スタートアップ企業のそれぞれが直面するストックオプションに関する課題は異なり、最適なパートナー選びがその成功を左右します。資金調達の柔軟性、企業価値評価の公正性、インセンティブ設計などの課題に対応するためには、専門的な知識と経験が求められます。
ストックオプションの評価と設計において特有の強みを持ち、これらの課題に応えるソリューションを提供しているストックオプション評価機関を紹介します。