ストックオプションを発行するうえで、考慮しなくてはいけないのがべスティングです。このページでは、ストックオプションにおけるべスティングの基礎や、設定が必要な理由、べスティングを設定する際の注意点などについて解説しています。
べスティングとは、あらかじめ定めた期間が経過することで、権利を確定させる契約条項をいいます。ストックオプションではポピュラーであり、権利が行使可能になるまでの期間を条項で定めています。
ストックオプションにおけるべスティングでは、一定期間においてストックオプションの行使が認められないケースが一般的です。一方で権利を付与した後、一定期間ごとに行使可能な株式の割合が増加するケースもあります。このほか、企業によってさまざまなべスティングを設定しています。
ストックオプションでべスティングを設定する理由は、主に自社の人材離脱を防止するためです。
仮にべスティングを設けていない場合、社員がストックオプションの権利を行使後、すぐに退職してしまうおそれがあります。最終的に優秀な人材が離脱してしまい、業績に影響が及んでしまう可能性も否定はできません。そのため、人材を防止する観点から、ストックオプションにべスティングを設定する企業は少なくないのです。
べスティングを定めていない場合でも、ストックオプションは、付与から2年間は権利を行使できません。
参照元:国税庁公式HP(https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/shotoku/181018-2/01.htm)
ただ、他のべスティングを設けていないと、社員が2年経過後にストックオプションの権利を行使し、退職してしまう可能性はあります。
べスティングの設定方法はさまざまですが、ストックオプションの権利付与後、段階的に権利行使の割合が増えるよう設定するケースが見られます。
例えば、社員に100株のストックオプションを付与し、入社から2年経過後は25株のみ権利を行使できるようべスティングを設定。そして3年目〜5年目にかけ、25株ずつ追加するように設定しておけば、入社5年目でようやく権利を100%行使できるようになります。
入社から2年経過後に100%権利を行使可能とするのも手でしょう。しかし、人材流出を防ぎたいなら、このような細かいべスティングを設けるのもおすすめです。
もしストックオプションにべスティングを設定した場合、M&Aの際に弊害となってしまうリスクが潜んでいます。
例えば、A社で働いていた社員がべスティング条項に則ったストックオプションを行使し、退職してB社に転職したとします。その後、A社がB社の買収へと動いた場合、退職した社員が反対すると、M&Aが失敗するおそれがあるのです。
特に子会社化を前提としたM&Aでは、売り手側の企業は株主全員の同意を取り付けなくてはいけません。そのため、ストックオプションの権利を行使した元社員が反対の立場を取った場合、M&Aが失敗に終わる可能性があります。
このような事態を防ぐには、退職する役員・社員の持ち株を自社が譲渡請求できる、創業株主間契約も締結しておいたほうがよいでしょう。創業者が株を保有することで、株主の反対によるM&A失敗のリスクを抑えられます。
べスティング条項を設定することで、社員のモチベーションが下がったり、怠けたりするようになるリスクもあります。一律でストックオプションを付与した場合、やる気がない社員が権利を行使できるまで居座り続ける可能性は否定できません。場合によっては組織全体へと波及し、怠け文化が生まれてしまうおそれもあります。最終的に企業業績が悪化する場合も出てくるでしょう。
社員のモチベーションを維持するには、成果次第でストックオプションの権利が失効する可能性があるなど、何らかの通達をする必要があります。
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